将棋のなかの創造力
羽生善治さんの「決断力」を読んだ。
- 作者: 羽生善治
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/07
- メディア: 新書
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実は所属しているゼミの必読文献リストにもあがっている本で、前から気になりつつ、ずるずると読むのを先延ばしにしていた本であった。
TV番組のプロフェッショナルか情熱大陸で羽生さんの特集を見てから、勝負の最前線に立つ人が”創造”や”学び”をどう捉えているのか知りたいと思っていた。
「将棋に限らず…」で始まる文は全て面白かった。
経験には、「いい結果」、「悪い結果」がある。それを積むことによっていろいろな方法論というか、選択肢も増えてきた。しかし、一方では、経験を積んで選択肢が増えている分だけ、怖いとか不安だとか、そういう気持ちも増してきている。
(中略)
そういうマイナス面に打ち勝てる理性、自分自身をコントロールする力を同時に成長させていかないと、経験を活かし切るのは難しくなってしまう。(p.32)
羽生さんの考える”プロ”と”アマチュア”の差が、単なる知識や経験値の差だけではないことがよく分かる。
”知る”ということと、”知りすぎる”ということのバランスも考えて進退をコントロールできる力が大事というのは、奥深くて面白い。
また、羽生さんは将棋の指し方や戦法について”創造”するときの考え方までも、どこか普遍的なものを読み取って言語化されている気がする。
だが、むやみに趣向をこらすのが好きなわけではない。趣向には思想がなければならない。やたら目新しさ で度肝を抜こうとするのではなく、その奇手が新たな地平を開拓する一歩でなければ、ただのこけ威しにすぎないだろう。(p.65)
私は、積極的にリスクを負うことは未来のリスクを最小限にすると、いつも自分に言い聞かせている。(p.72)
私は、どうなるかわからない混沌として状況こそ、将棋の持っている面白さ、醍醐味の一つだと思っている。そこには、発見があり、何かを理解することができ、何か得るものがある。ものすごくやりがいがある。(p.76)
このほかにも”保守”と”破壊”、”創造”について語られている場面が多い。
そして、この”保守””破壊””創造”を実践のなかで何度も繰り返していくことでしか、”発見””成果””学び”は生み出されないのだと、何度も主張されているような気がした。
自分は駒の”金”と”銀”の動き方もあやふやなレベルだが、将棋を突き詰めて出てくる”創造””集中””決断”に関する普遍的な記述は、一見の価値があると思った。